2010/07/26

058 動きについて

ウィリアム・フォークナーの小説からの抜粋。

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そのとき、雄鹿がそこへやってきた。
雄鹿は視界のなかに現われたのではない、
ただそこにいただけであり、亡霊のようには見えず、
まるで光がすべて体のなかに凝縮(ぎょうしゅく)し
光の源(みなもと)になったみたいに光のなかを動くばかりか、
光をまき散らし、いつもの鹿のように人が先に鹿を見たと見えながら、
そのほんの一瞬前に人を見て、すでに走っていた。
すでにあの最初の高く舞う跳躍を行ない、体を曲げ消えようとしていた。
枝角(えだつの)は、あのおぼろげな光のなかでさえも、
頭の上におかれ均整を保った小さなゆり椅子(いす)のように見えた。